2023年1月14日
中部横断道実走

 いまさらですが、ようやく実行しました。

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 昨日は東京オートサロンのプレスデーだったようですが、私はゴールド免許を引っ提げて、高速道路の地道な取材にいそしみました。

 東名・新東名の現状を見分しつつ、ずっと「走らなきゃ」と思っていた中部横断道路まで足を延ばしました。

 中部横断道は、静岡県の新清水JCTから、中央道の双葉JCTを結ぶ路線です。計画としては佐久市までですが、そっちはまだルートも未決定な区間があるので、私が生きているうちには開通しないでしょう。

 もともと中部横断道は、ルートに大きな問題がありました。

 20年前に刊行した拙著『この高速はいらない。』では、このように記しています。とっくに絶版なので、長文引用します。

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☆中部横断道

その1)清水(尾羽ジャンクション)ー双葉ジャンクション間

 東名の清水インター近くの尾羽ジャンクションから、第2東名の吉原ジャンクションを経て、富士川沿いに北上し、韮崎市と甲府市の中間、双葉ジャンクションで中央道に接続する路線。このうち双葉ー白根間のみ平成14年3月に開通済みで、増穂インターまで平成5年に施工命令、1~2年以内に完成する見通し。
 この路線に対する第一の疑問は、ルートの形状にある。
 中部横断道は、本州中央部の太平洋側と日本海側を高速道路で結ぶことにある。立派な理念かもしれないが、利用者の利便性や当面の需要というものを考えていない。
 中部横断道は、清水から双葉まで、南北にほとんど一直線である。おかげで、首都圏方面から途中の身延町などに行く場合、三角形の2辺を通るような遠回りとなる。
 第2東名への接続は、国道52号線との交点にある第2東名清水インター付近にすべきだった。そうすれば、名古屋方面からは約5kmの遠回りになるが、首都圏方面からは約15kmも近道になる。
 中央道との接続も、甲府南インターと甲府昭和インターの中間地点付近にすれば、諏訪方面からは約4kmの遠回りで、首都圏方面から約17km近道になった。
 東名・中央どちらかが事故や災害で通行止めになった際、中部横断道を使って迂回するにしても、それによって互いに約10km近道になるし、建設延長距離も双方合計で10km強短縮され、約1000億円節約が可能だった。
 現プランは、わざわざ余計に建設費をかけ、しかも不便になっている。ルートを決定した国土交通省が、太平洋側と日本海側を最短距離で結ぶことしか頭になかったとしたら、信じられない単細胞ぶりと言うしかない。いまさらルートの変更は困難だろうが、こういった意味不明なルートがいったいどこでどのように決められているのか、理解に苦しむ。

 私は双葉ジャンクションから清水までを、平成14年5月27日(月)に実走した。
 東京方面から中央道で双葉へ行き、中部横断道へ分岐。暫定2車線供用である(交通量からして、4車線に拡幅されることがあるとは思えないが)。約7kmで現在の終点、故・金丸信代議士の故郷、白根町の白根インターへ。
 白根からは国道52号線で南下する。増穂までは、高速の側道として国道バイパス(甲西道路)が開通している。。
 開通間近の増穂インターまで、中部横断道を使って首都圏側からアプローチすると、甲府南インターから31kmで約21分。一方、中央道を甲府南インターで下り国道を走ると、14kmで約21分。所要時間が同じなのに料金を取られるのだから、首都圏側から増穂インターまで中部横断道を使う人はいない。
 増穂町の中心部を抜け、富士橋を過ぎると、国道52号線は富士川沿いを走る快適な道路となった。中富町や身延町では市街地を迂回するバイパスも開通している。県境手前から峠道になるが、前を走る観光バスが制限速度の50km/hを下回るカーブはなかった。
 当日は途中4カ所も工事による片側交互通行個所があり、5~6分ロスしたが、増穂から第2東名清水インターの接続予定地点まで59kmに1時間15分、平均速度は47km/h(『道路時刻表』ではこの区間1時間12分、平均速度49km/h)。国道1号線との交差点、清水市興津までは、清水市内の渋滞のため1時間35分、平均速度45km/hだった。
 車種としてはトラックがかなり多く、交通量は増穂町付近で1万5000台/日、そこから南は1万台/日レベル。十分に2車線国道の許容範囲だ。
 また、駿河地方から山梨方面に向かうルートとしては、富士市から甲府市までの国道139号ー国道358号もあり、こちらだと所要時間1時間34分。清水市ー甲府市間の国道52号線ルートの1時間59分より25分速い(ともに『道路時刻表』による)。
 清水ー増穂間59kmが全通した場合は、制限速度80km/hのため所要時間は44分。現在の国道経由に対して、約5割の短縮となる。
 5割の時間短縮は魅力ではあるが、この区間はほとんどすべてがトンネルと橋梁になり、建設費が非常にかさむ。清水ー増穂間59kmの予定事業費は5580億円、1kmあたり95億円にも達する。
 太平洋側と内陸を結ぶ他の高速を見ると、磐越道のいわきー郡山間が約1万台/日、岡山道が8000台/日であることから考えて、予想交通量は1万台/日。コストパフォーマンス指数は「105」にとどまる。
 必要度は、渋滞解消効果が「1」。時間短縮効果が「4」。ネットワーク効果が「2」。地域振興効果が「2」。合計「9」だ。
 必要度の低さと採算性の悪さから考えて、清水ー増穂間の建設は中止するしかない。

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 この20年間で紆余曲折あり、中部横断道は、道路公団民営化議論の過程で、採算性が超劣悪な富沢ー六郷間約28kmは新直轄方式(全額税で建設)に変更され、料金無料になりました。

 新清水から、甲府盆地の入り口である増穂ICまでで計算すると、総延長の約半分が無料になったので、通しで利用する場合の料金もほぼ半額。全線通常料金に比べれば、利用コスパが大幅に改善されたため、私も建設容認に転じておりました。

 ただ、実際に走ってみると、全線の半分以上がトンネルで、眺望はほとんどナシ。沿道には、身延山久遠寺を除けばめぼしい観光資源もなく、前述のようにルートも問題だらけのため、一般ドライバーとしては、大変利用しずらい路線でした。

 中部横断道を利用することは、おそらくこれが最初で最後でしょう。まさに一期一会。死ぬまでに走れてよかったです。涙。

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