MJアーカイブス

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フォルクスワーゲン ゴルフGTI

日付/2009.11.15



マリオ高野の下流試乗記

 まさに全能なる神のようなクルマです。ダサかったはずの外観はわずかなローダウンと、グリルに赤いラインを付け足しただけで高性能車オーラを発散させるところは、欧州過激ハッチの王者6代目の伝統によるものでしょう。退屈でツマラナイと称される内装とて、その高精度感に溢れたスイッチの操作フィールを味わえば、これぞ伝統の質実剛健さとしてほおずりしたくなります。
 先代モデルでも堪能できた、凡庸な腕のドライバーでも、まるでプロ級の腕になったかのように錯覚させてくれる鉄壁の安定感を伴ったハンドリングはさらに鋭さを増しておりますが、電子制御デフのおかげでコーナーの出口ではより早く、より自信満々にアクセルを全開にすることができるのが痛快です!
 最先端をゆくパワートレーンの洗練度にもさらなる磨きがかかり、加速と快音のためにガソリンを1滴たりとも無駄にせず使い尽くしているかのような高効率フィールには、エコカー的な満足感さえ伴うようになりました。
 しかも燃費は、メタクソに踏み倒した区間を含めてもリッター12kmを記録。乗り心地は硬めながらも、余裕で家族を納得させられるレベルです。欠点や死角はほぼ皆無の全能ぶりに、ただひたすら尊敬の念を抱くばかりでありました。


MJ参謀長の見解
 こういうクルマを神と崇めるというのは、高性能洗濯機に土下座しているようなものだ。
 一般的なクルマ好きが「いいクルマだ」と感動する要素には満ち満ちているが、それ以上のものではない。ゴルフは、一番下のグレードが最良であろう。


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フェラーリ ENZO

日付/2009.11.07




 エンツォは快適かつ地上最速、という間違ったイメージができつつあるが、快適ってのはF40や50に比べればの話で、あれだけロードノイズが入ってくる市販車はそうない。
 エンツォの何が恐ろしいか。
 実を言うと、車両感覚です‥‥。どこまで幅があるのか、いまだによくわからない。
 エンツォに乗ると、東京オートサロンに出てるような車高激低でエアロバリバリのチューニングカーの車幅を、2・5ートルにまで広げたみたいな感覚なんよ。でさ、今にも地面に付きそうなエアロが、全部ウルトラ高価なカーボンでしょ。そんなもんで公道走れないでちゅよ普通!
 仮にエンツォを買ったとしても、乗るのは1年に4回くらいで十分。あとは飾っとくとか、レーサーに運転させて、それを助手席で楽しむとか、サーキットのコースサイドで眺めるとか、そういうのがいいと思う。見て自己満足してたほうがいいよ! 運転すると怖いから。

 で、そこを押して運転するとですね、核融合パワーのように加速します。その感覚はひたすら情熱的で爆発的なもので、とても興奮するけどかなり疲れます。いや、一瞬フル加速すればもうお腹いっぱいって感じです。
 操縦性は?
 限界まで攻めたことがないのでわかりません‥‥。そんなことはできないし、しちゃいけないよ! 人の道として。
 確かにエンツォはF1マチックだから、AT限定でも乗れる。でも、運転しやすいなんてのはまったくの誤解で、ユーザーのことなんかほとんど無視して、自らの理想のみを追いかけて作られた超ワガマママシンだ。他のスペチアーレ同様に。
 そこが最高です、エンツォ様。


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フェラーリ F50

日付/2009.11.05


 キーをON位置までひねり、F40より一回りデカいボタンを押してスターターを回してエンジン始動。2本の針しか見えなかったインパネが、パーッと赤と黄色に浮かび上がる。まあキレイ。ウットリ。
 今でこそノンパワステ・6速MTのF50は、相当クラシカルな存在だけど、それでもやっぱり未来から来たUFO的なるオーラを激しく放っている。
 軽くブリッピングをかますと、フォーミュラ・ニッポンみたいなサウンド&レスポンスで「ダン!ダン!」とエンジンが吼える。フツーのブリッピングはブワーンブワーンだが、F50は「ダン!ダン!」。
 やはりエンジンを直にボディにボルト止めしてあるダイレクトマウントというヤツは、本当に本物のピュアレーシングカーとイコールであって、快適性とは完璧に訣別している。それは脱水中の洗濯機の上に座っているようなもので、どんなにステキな内装や高価なシートを驕っていても、洗濯機の上は洗濯機の上なのだ。
 40は市販車ベースのマシンであって一種のチューニングカーだけど、50は生まれながらのピュアレーシングカー。F50を公道で走らせる瞬間は、ただひたすら、本物のマシンが放つスーパーなオーラと、レーシングカーを公道で走らせる緊張感とでヘトヘトになる。
 スペチアーレは運転するものに非ず。鑑賞するものなり! というのが、私が得たひとつの悟りである。


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フェラーリ F40

日付/2009.11.05




 駐車場にF40が入ってきた瞬間、あんまりカッコいいんで引っ繰り返りそうになった。
 初めてナマのF40に接したのは、えーと、14年くらい前かな? 14年たってもいまだにコレだからな。
 いや、考えて見ると、「14年たってもいまだに」じゃなく、「14年前に惚れたからこそ」なのかも知れない。つまり、初めてF40を見る若い方はまた違う感じ方をされることと推察いたしますが、私はF40を見る度に、ああ死ぬほどカッコいい、地上にこれ以上カッコいいクルマはない、と思うのであります。MAX最大限に美しいのは288GTOだけど、MAX最大限にカッコいいのはF40。
 見てもカッコいいが、乗るとまた狂ったようにカッコいい。重いクラッチを踏めばクラクラし、ノンサーボのブレーキには総毛立つ。ゆっくり流してその野太いターボの排気音にヤラれる。「ぱぁーん!」と全開加速をくれれば、このまま私を死なせて下さい‥‥。
 赤き狂獣・フェラーリF40は、言うまでもなく、とてもとても危険なクルマである。それは、たった1度ではあるけれど、F40をサーキットで試乗した経験を持つ私にとって、骨の髄まで沁み込んだ観念だ。
 今回オレは、約4年ぶりにF40に乗って、触って、危なさは承知の上で、それでもやっぱりそのあまりのカッコ良さに、改めて「欲しい」と思った。置き物として。
(2002年 ROSSO)


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フェラーリ 288GTO

日付/2009.10.21


嗚呼、幻のGTO。オレを思いきり抜いてくれ‥‥。


 オレが知ってる範囲で一番美しいクルマ。
 それは、フェラーリ288GTOだ。
 日本語で「美しい」と書くと、どこかはかなげなニュアンスがある。288GTOは、スーパーグラマラスでありながら、かすかにはかない。その風情が、どうしようもないほど心を打つ。たとえばF40は、とてつもなくカッコいいけど、とてつもなく美しいかと言うと、ちょっと違うでしょ。
 そう言えば、288GTOオーナーのエディ・アーバインが言ってたな。
「フェラーリのロードカーのどこが好きなんですか」
「ルックスだけだ」

 生涯最初にして最後になるであろう、288GTOフル加速。
 絶対的な加速は、360モデナと同じくらいかな。しかし、そんな物理的性能よりも、それは限りなくステキな瞬間だった。ブーストはコンマ9。1・3のF40が暴力的とするならば、288は狂気のほんの一歩手前、ドライバーに甘美な夢を見る余裕を与えてくれるギリギリの境地にあった。
 ユルいF40? とんでもない。288GTOは、そんな軽薄さとは正反対のクルマだ。スタイル、インテリア、ボディ、足、そしてエンジン、なにもかもが、見たイメージそのままに、清楚で、優美で、力強かった。288GTOは、なにもかもがそのまんま288GTOだった。

 取材の最後。
「この幻の名車で、私のF355スパイダーを、思い切り抜いてください」
 オーナーのS氏にそうお願いした。
 ハイウェイで全開加速を繰り返し、周囲を凍らせるほど美しいロッソ・コルサの288GTOと、たわむれるようにオレは走った。ノーマルで触媒レスの彼女が吐き出す、炭化水素の香りを楽しみながら。
 ああ、この世はなんてエレガントなんだろう。
(2002年 ROSSO)


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