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フェラーリ 575M

日付/2009.10.20


 575Mのイモビライザースイッチを押し、「ピン、ピン」というあの耳障りな音を確認してスターターオン。
「キュルずごーおごおおおおおお」
 あり? ずいぶんワルそうな音やんけ。ちょびっとブリッピングしてみっか。
「ぎゅろん! ぎゅろん!」
 むむむむむ。インド象の唸りのごとき野太いエクゾーストノート。オレはやや覚醒した。これは本物のフェラーリかもしんない。

 ミッションはF1システム。550マラネロはラクチン旦那スーパーカーのくせにクラッチが重くて往生したが、これはホントにラクチンだ。
 右のパドルを引いて1速に入れ、ゆっくりアクセルを踏む。
 おおっ。クラッチミートがメチャうまい。355や360ではどこかシロートっぽい発進だったF1システムも、ついに円熟の域に達したのか。

 そろりと芦ノ湖スカイラインに乗り出し、じわっとアクセルを踏み込んだ。
「ずごわああああえー!」
 どひー!
 2000rpmちょいから軽く踏み込んだだけなのにウィリー寸前!
 このインド象のごとき大排気量12気筒の低速トルク感は、池沢さとし先生のテスタロッサ以来かも。私が乗ってた512TRも、2000rpmくらいから踏み込むだけで助手席の人間が悲鳴を上げたものだが、でもあれですら、ここまでの低速トルクはなかったように思う。
 恐らくドライブ・バイ・ワイアのセッティングだろうと思うんだけど、ハーフスロットルからちょっと踏み込んだだけで燃料ブバッと吹いてトルクがドカンと出て、ケツがアウト側にバビーン! と跳ね上がる。そこでASRの制御が入ってケツは収まるので一安心だが、OFFにしたら飛ぶなこりゃ。
 これ、いいかも!! (2002年 ROSSO)


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フィアット アバルト500

日付/2009.10.17


 謙譲の国・ニッポンで見るアバルト500は、砂漠に咲く一輪の花。ああ、なんて可憐で、それでいて華やかなんだろう。開口部の大きいフロントバンパーや、ディフューザー一体型のリアバンパー、リアルーフスポイラーなどが、古典的なスピードへの情熱を表現しつつ、紅いストライプが粋にキマっていて、「OH! モーレツ」に癒される。

 インテリアがまたいいんだわ。専用デザインのレザーシートは、「ローマを見ずに死ぬな」と歌い、キノコみたいににょっきり生えたブースト計などのスポーティな装備は、どうしてイタリア人ってこんなにセンスいいんだろ、と溜息をつかせるのみ。ダイハツの純正MOMOステがいかに無駄な抵抗だか瞬時にわかる。

 そして走り。コーナリングだとかブレーキングみたいな難しいことは言いません。この1・4リッターターボエンジン! とにかく、すごぉく速い。いやすごぉく速く感じる! 実際速いかどうかなんてどうでもいい。そう感じるんだから!
 ダッシュボードの「SPORT」ボタンを押すと、オーバーブースト機能が働き、「トルクがアップする」とカタログには書いてあるけれど、感覚的には「空を飛ぶようになる」くらい楽しくなる。最大ブーストは、ノーマル時は約0・7バールだが、SPORTでは1・1バールまでアップ(メーターによる拙の目分量)。レスポンスからパワーから、全部1・5倍になる感覚だ。こんなのを知ったらもう、ノーマルでは走る気がしない。常にスポルト。いつでもどこでも絶対スポルト! にしたくなってしまうけど、華を華でいさせるために、普段は地味にノーマルで走るのもいいかもね。お箸の国の人だもの。

 こんな快楽的なクルマが、200万円台で買えるなら、どっからも補助なんかいらん! くれると言ってもいらん! バン!(卓袱台を引っくり返す音)(『NAVI』09年7月号)


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フィアット アバルト グランデプント

日付/2009.10.17



 いきなりこのルックスを見ただけでヤラレた。カッコいい。カッコよすぎる。
 まず色使いのセンスが違う。ホワイト地にアバルトの赤いストライプに心が沸き立つ。ドアミラーの赤がまたステキすぎ! これがアバルト伝統の色使いなのか。ああ、イタリア人はなぜこんなにオシャレなんだ。イタリア盲信者である私は、ただ漠然と「やっぱりイタリアはスバラシイなぁ」と絶賛するのみ。盲信なので完璧に正当化できる。
 ちなみにボディカラーは、この白の他に赤と黒の3色。このクルマ、白と赤と黒のコントラストが最高に映えるので、この3色以外に設定がないというのも全面的に正当化できる。
 スタイリングの印象も最高です。専用デザインのフロントバンパーは、実にさりげなくイタリアの情熱を表現し、ブラックアウトされたアンダーボディが適度に印象を引き締め、黒いルーフスポイラーは涙が出るほど絶妙に小さい。かつての"本物のアバルト"の850TCあたりは、イタリアの小さなチバラキと呼びたいほどバリバリのヤル気系だったけど、現代日本ではこのアバルト・グランデプントくらいの、さりげないやる気感が最高にオシャレさん。インテリアも以下同文だ。エクステリアと同じく、パーフェクトにオシャレに決まってる。いちいち書くのは省略しますが、とにかくすべてがステキなので心配は無用です。

 で、アバルトの命であるエンジンは、1・4リッターターボ。この設定もイイじゃないか。2代目プントに日本市場で設定されていた「1・8HGTアバルト」の1・8リッターNAエンジンは、ただ排気量をデカくしただけでまったく眠く、本物を知らない私でも「どこがアバルトじゃ」と言いたくなったが、今度はランチアとも共用する小排気量ターボなのだ。かつてのかんしゃく玉のように炸裂するメカチューンNA(乗ったことないですが)ではないけれど、ただ排気量がデカいダメダメ君よりずっといいし、夢とロマンにあふれてる。なにしろイタリアもんは気分ですから! ミッションは当然MTのみの6速。左ハンドルだけというのもいかにもイタリアですね。
 その他のチューニングポイントとしては、足回りがスポーティに固められ、トレッドは若干拡大、車高は若干ローダウン。ブレーキはアバルト専用の4ポッドキャリパーへと大幅に容量アップされている。

 走り出してみてニヤリ。ああ、これが現代のアバルトなんだね。この極端なほど軽い電動パワステ、イタリア人はパッパ切れる軽いステアリングがお好き。足回りは実に適度にスポーティに決まってる。本当に適度、決して本気仕様じゃないところがニヤリだ。もっとスポーティなSS(エッセエッセ)仕様は相当ハードだと聞くけれど、こっちは気分で楽しめるスポーティさで、オールマイティに乗り倒せる。ブレーキがまたオーバーサーボ気味で、軽く踏み込んだだけで猛烈に効くように感じさせる。なんて楽天的な仕上がりなんだ。この軽さが許されるのはイタ車だけ!
 エンジンはとってもスムーズに回る。低速トルクを確保しつつ、回転を上げてブーストをかければイタリアンにパワフルだ。イタリアンにパワフルというのは、気分的には速いけれど、実際にはそれほどでもないということ。ドライバーの気合でカバーする必要があるところがうれしいっす。

 インパネ中央にある「パワーブーストボタン」も子供っぽくて最高! 押すと10%以上パワーアップするというけれど、正直、短時間の試乗では、その差がはっきりわからないほど微妙でした。考えてみれば、10%のパワー差をカラダで認識するのって、結構シビアじゃないですか? でも、ボタンを押せばパワーアップする! と信ずる者は救われる。そこがイタリアンなパワーフィールだよね。
 ついでに、ボタンを押すとステアリングフィールもクイックになるのだが、これまたあくまで「フィール」です。フィーリングがすべてですからイタリアもんは! このエーカゲンさが好き。
 かくのごとくアバルト グランデプントは、イタリアンにオシャレ気分なホットハッチなのでした。たとえばアルファロメオの現行ラインナップと比べても、いろんな面でイタリア濃度が濃い目で、それでこの価格は、相当お値打ちだと断言できる。同じエンジンを積むアバルト500も楽しみですね。(『NAVI』09年5月号)


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フェラーリ F512M

日付/2009.10.08


 F512Mは、ただの一度しか運転したことがありません。大阪のアートスポーツ様まで出かけて、白いボディがまぶしい個体に、生駒あたりで試乗させていただきました。
 当時はこのスタイルが猛烈に評判悪く、「フェラーリも終わった」とずいぶん言われましたが、現在は世の趨勢がもっともっとエグ系に振れているので、もうほとんど違和感はありません。
 で、F512Mがどうだったのかと申しますと、なにせ「エンジンがホンダのVTECみたいに回る!」と思いました。
 当時の私の脳内はまだ、12気筒と言えばテスタロッサ! のイメージで凝り固まっており、ホンダの4気筒みたいにビュンビュン回る5リッター12気筒エンジンに、大いなる違和感を抱いたものです。12気筒フェラーリと言えば堕落の極致、堕落の芸術だと思い込んでいて、フェラーリが本来高回転高出力の化身であることなど忘れ去っていたというか、知らなかったのです。
 よって、テスタとパワーピークが2000rpm以上違うF512Mを、近代化して退屈になった12気筒と捉えてしまったのですが、今考えればこちらこそが本来のフェラーリエンジンのあるべき姿で、堕落からの更正だったわけですね。
 しかし、今でもどこかに、フェラーリ12気筒は、1500rpmからでもホイールスピンをかますようなバカトルク型であって欲しい、という願望があります。なぜならそれが、私が触れたフェラーリの原点(=テスタロッサ)だからです。


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フェラーリ 512TR

日付/2009.09.30



 魂の燃焼。そんな言葉が適切かもしれない。いや、愛の狂気というヤツであろうか。
 私は1999年、赤と白、2台の512TRを続けざまに乗り継いだ。
 12気筒フェラーリは、背が高すぎる。足が長すぎる。胸もデカすぎる。彫りが深すぎる。スーパーモデルみたいで怖いと思っていたが、乗ってみて初めて、「デカい女が好き」という趣味がアリであることを悟った。

 512TRは、なんと言っても直線が絶頂である。アクセル全開にするだけで、気持ちよすぎて気が遠くなる。
 パワーはたんまりあるが、トラクションも腐るほどあるから、持て余すことはない。7400rpmから始まるレッド寸前まで1速で引っ張り原爆サウンドを轟かせれば、そこで頭がブチ切れて2速でガツンとつないでズガンと全開、ホイールスピンさせつつフル加速。そのうちメインシャフトがブチ折れるなぁと思いつつもさらに床にめり込むまで踏む。1速で100km/h、2速で150km/h、3速で200km/h、4速で260km/h、5速で300km/hオーバーだ。4500rpmを越えたあたりからの爆発的噴出感は、いかにF355や360モデナのV8が優れていても、大人と子供。超ハイギアードな5速ミッション(ヨーロッパ仕様)とあいまって、地獄の底まで続くような果てしない加速感が味わえる。

 18インチ化によって採用された大径ブレーキローターも、直線でのまさかに対応できるだけのストッピングパワーを持ち、糸の切れた凧のようなテスタロッサに比べれば、リスクを大幅に小さくしている。ただし初期モデルにABSはなく、ハードブレーキングでは「キャリパー張り付き」が起き、ペダルを戻してもロックが解除できないことがある。
 操縦性は、意外にも善良なるアンダーステアで、滅多なことではリヤは滑らない。実は私、フェラーリでのツクバアタックでは、いまだに512TRのタイムがベストです。360モデナは難しすぎて、ついにTRを上回れませんでした。


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