
(ここ10年間の私の交通ジャーナリストとしての活動を知っていただくために、過去の記事を収蔵させていただくことにしました)
<2001年6月 週刊SPA!>
小泉内閣の発足により、道路行政にも変革の波が押し寄せている。いままで「こうすりゃいいのに」と誰もが思いつつ決して実行されようとしなかった施策が、マジメに議論され始めた。この機に乗じてSPA!もなんか言わねばなるまい。
6月11日、国土交通省は、ETCの普及促進策について発表を行った。それによると、ETC設置車は、2年間と期間を限定した上で、高速料金2割引きという開店記念特別バーゲンを実施するという。現在のハイウェイカードだと、最大割引率は約14%だから、それより6%も多い。しかし、こんな但し書きがついていた。
「割引額の上限は、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団の3社でそれぞれ1万円つづ、合計3万円まで」
なんだこれは。国土交通省は「合計3万円割引けば、ETC車載器の設置費用にほぼ充当でき、普及が進む」と寝言を言っているらしいが、いったい東京と大阪を均等に往復しつつ、2年間で3万円の割引き枠のみキッチリ使い切るドライバーがいるのか!? よしんばそういう人が実在しても、3万円っぽっちじゃETC車載器設置費用の一部を取り戻せるに過ぎないから、実質割引額はゼロかマイナスだ。それでは「新しもの好きの左ハンドル車オーナーくらいしか買わない」という現状はなんら変わらない。
いったいなんのためにETCを導入するのか。料金所渋滞の緩和と利便性の向上、プラス都市部での交通コントロールへの応用(時間帯による料金の変動や都市高速への距離制料金の導入)である。そのためには、より多くのクルマに普及させなければならない。普及させるためには、有利な投資である必要がある。有利な投資だと誰もが思えば、ETC車載器の売れ行きは急速に伸び、量産効果によって価格は大幅に下落し、さらに普及が進む。竹中平蔵先生でなくても理解可能な単純な経済理論だ。よって第一の建白。
「ETCについては、今秋から2年間は期間限定で20%引きを実施し、それ以降はなるべく早期にプリペイド方式を導入し、ハイウェイカード同様の14%引きとせよ」
次。道路特定財源の一般財源化について。小泉内閣は推進する構えだが、当然そうすべきである。
私は昨年秋旭川から稚内まで往復し、あまりの道路のよさにめまいを感じた。しかし同時に、交通量もめまいを感じるほど少なく、大雨が降ると黄色い「道路維持車」が異常なほど多数出動し、道路の損壊に備えていた。道北では、道路建設とその維持が最大の産業と化しているのである。こうして道路特定財源が食い物にされている。道路特定財源というワクがある限り、こういったムダがなくなる見込みはない。ならば廃止するしかない。
道路特定財源だけでなく、財政投融資資金もドブに捨てられ続けている。誰も走らない高速道路の建設である。一例として旭川から稚内に通じる北海道縦貫自動車道は、いま建設たけなわだ。
しかし旭川ー稚内間の一般道に渋滞など存在せず、しかも時速90キロ以上で流れている。対する高速道路は、大部分が片側1車線の暫定開通ということで、制限速度が70キロであった。そんな道路を高いカネ払って走るバカが滅多にいないことは、言うまでもない。
どうせ公共事業をやるなら、建設によって経済効果がさまざまな分野に波及するものを優先べきなのは当然。するとすぐ浮上するのが「IT関連」だが、ITがどれだけ普及し、なんでもネット通販で買えるようになっても、最終的にモノを自宅に届けるのは、道路を使った物流だ。ITが進むと人の移動が不要になると思われがちだが、物流はかえって増加する。よって、経済効果が上がる道路を選んで建設すれば、極めて有効な経済対策になる。竹中平蔵先生でなくてもわかりますよね。
経済効果の高い道路とは、具体的には首都圏の3環状高速(首都高中央環状線、外環道、圏央道)と第二東名・名神である。渋滞による経済損失額(年間)は、東京がブッチギリの全国トップで1兆5507億円。対する鳥取県は525億円と約30分の1以下だ。そういった現状を考えれば、おのずと投資先は見えて来よう。
ただし、ただ単純に造ればいというものではない。アクアラインや本四連絡橋みたいなバカなモンは2度といらない。真に役に立つ道路でなければならない。
首都圏の環状高速は、都心を迂回し交通をスムーズに流すために建設される。しかし、迂回は往々にして遠回りになる。現状では遠回りすると料金が高くなるから、都心を突っ切る。これではなんの解決にもならない。
そこで、首都圏3環状、特に外環道と圏央道は料金を低く抑える必要がある。ここで第2の建白。
「緊急の必要性のない、ムダな道路建設(高速道路を含む)はすべて即刻中止。道路特定財源を一般財源化した上で、その一部を集中的に外環道と圏央道に投入し、早期に完成させ、料金を通常より大幅に安くする」
2本とも巨額の建設費が必要ではあるが、道路特定財源1年分(約5兆7000億円)でまかなえる。完成すれば経済効果は莫大。これぞ現代日本のニューディール政策である。














