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高速道路問題 2002年8月 猪瀬直樹氏初インタビュー

日付/2011.02.09




<2002年8月週刊SPA!より>

 道路公団民営化論議初期、民営化委員会の台風の目・猪瀬直樹氏に初めて直撃した際の記事です。

 

清水 道路四公団民営化推進委員会の流れが、猪瀬ペースで、どんどん前向きになって来てますよね。
猪瀬 委員会を公開にしたからだよ。みんな見てるわけだから、変なことは言えない。そういう場で公団にデータを出させて、次々と事実を突き付けて行けば、誰も反論できなくなる。
清水 道路族の親玉、自民党の古賀誠氏までもが、民営化を容認して、建設優先順位を付けることも「ひとつの方法」なんて言い出した。ここ2カ月で、大変な変わりようです。
猪瀬 データという事実を無視すれば、悪役になるからね。誰だって勝ち馬に乗ってくる。
清水 8月中には中間答申が出ますよね。僕は、民営化推進委員会で、きちんとした結論が出ることはもう間違いないと思ってます。問題は、それを政府が実行できるかどうかと、建設中・計画中の個別路線ごとの建設の是非でしょう。
猪瀬 第2東名・名神をやめれば、約10兆円節約できる。あれ1本で負担はかなり楽になる。

第2東名・名神は必要だ

清水 えっ! 猪瀬さんは第2東名・名神を全部やめるべきだと考えてるんですか。
猪瀬 豊田と四日市の間は工事進捗率が高いし、名古屋の湾岸線として機能するからいいが、進捗率の低いところは中止すべきだ。君はSPA! で第2東名・名神のことを書いてたよね。全部走った?
清水 走りました。その結論が御殿場ー草津間の部分開業です。その約326キロに、すでに2兆3000億円使っていて、あと4兆円で部分開業できる。御殿場から海老名までは現状の東名が6~7車線に拡幅されてるから不要、草津から大阪までは京滋バイパスと第2京阪道路が別に建設中だから不要。それで11兆円の予定事業費のうち4兆7000億円節約できます。
猪瀬 御殿場ー草津間? それは金がかかりすぎるだろう。
清水 でも、静岡県内や亀山ー草津間は相当できてるんですよ。
猪瀬 (資料を見ながら)長泉ー引佐(浜名湖の北)は進捗率50%、亀山東ー大津が40%だ。
清水 平地はまだですけど、橋梁やトンネルはほとんどできてました。
猪瀬 御殿場から三ヶ日までと、亀山東から草津までの部分完成に、あと1兆7000億円。それも予定されてる6車線じゃなく4車線。これで十分だろう。
清水 交通量としては4車線で十分だけど、それだと2カ所でボトルネックができます。東名・名神はほとんどパンク寸前ですから、安全保障として増強は必要ですよ!
猪瀬 まるで道路公団だな(笑)。
清水 言ってて自分でもそう思いますけど(笑)、造る以上機能しなければ意味がない。

いらないのは過疎路線

清水 一方で北海道、東北、中国、四国、九州の大部分の路線は、並行する一般道が50キロ以上で流れてるから、高速造ったって、高い料金払って使う人はいない。北海道なんて国道で楽に平均速度60キロ以上稼げる。流れに乗って走ってても、スピードメーターはほとんど80くらい指してます。なのに高速は暫定2車線で70キロ制限。制限速度で一般道と10キロしか差がないんですよ。
猪瀬 高速でのスピード取り締まりはどう。
清水 やってます。クルマがほとんど走ってないから単独走行になるんで、狙われたら一発ですよ。
猪瀬 一般道は。
清水 一般道も猛烈にやってますけど、交通量が高速の10倍くらいあるから、80キロくらいで流れに乗って走って、先頭に立たないように気をつけてれば大丈夫です。
猪瀬 それじゃ高速走らないよな。
清水 走らないですよ。こういう実態は北海道だけじゃない。
猪瀬 全部走ったの。
清水 予定路線2300キロのうち、2000キロくらいです。
猪瀬 偉い(笑)。
清水 猪瀬さんも走ってみてください。
猪瀬 走りたいけど時間がないんだよ。でも、太宰治を題材にした『ピカレスク』の取材で青森でレンタカー借りて走り回ったり、地方はいろいろ走ってるから。

民営化委員は「ほぼボランティア」

清水 運転は好きなんですか。
猪瀬 好きだよ。メルセデスSLKとBMW740iに乗ってる。クルマ好きじゃなきゃそんなのに乗らないだろ。
清水 僕は、自分でクルマを運転しない人が道路の議論をすること自体、信じられないんですよ。だからこんなメチャクチャな計画になるんだ。
猪瀬 大丈夫だよ、オレは運転好きだから。何回もスピード違反で捕まってるんだから(笑)。
清水 今後の新規路線建設資金は、どうすべきだと思いますか。
猪瀬 整備新幹線方式(国と地方自治体とJRが建設費を出し合う形)だろう。
清水 それしかないですよね。個別路線の建設の是非については、どういう判断になるんでしょう。
猪瀬 そこまで民営化推進委員会がやると越権と言われるから、我々は判断基準を決めるに止まるだろう。
清水 具体的な判断基準は?
猪瀬 工事進捗率だね。
清水 進捗率だけですか!? 僕は「どれくらい必要とされているか」で判断すべきだと思う。8月22日発売の僕の本に、路線ごとに詳しく書きました。ゲラをお持ちしましたから、是非読んでください。なんとか国の役に立てていただきたい!
猪瀬 わかった。参考にする。基本的に同じ意見みたいだな。
清水 ところで、民営化推進委員は報酬はあるんですか。
猪瀬 ないに等しいね。
清水 ボランティアですか!
猪瀬 ほとんどそうだ。
清水 ボランティアで「国家政策の破壊者」だの「民営化マフィア」だの言われて、割に合わないですよね。意欲の源泉は何ですか?
猪瀬 道路公団の40兆円の負債を処理できれば、日本国の700兆円の返済の糸口も見えてくるんだ。
清水 なるほど‥‥。日本国のために応援してます。

 

清水草一算定
建設を中止・凍結すべき高速道路の区間一覧

道東道(夕張ー十勝清水間、池田ー釧路・北見間)
道央道(和寒ー名寄間)
日本海東北道(小坂ー大館間、岩城ー本荘間、鶴岡ー温海間)
東北中央道(福島ー米沢間、東根ー尾花沢間)
首都高速横浜環状北線
第2東名(海老名南ー御殿場間)
中部横断道(佐久南ー清水間)
第2名神(大津ー神戸間)
阪神高速湾岸線8期
近畿道(紀勢ー尾鷲北間)
鳥取道(智頭ー鳥取間)
山陰道(宍道ー出雲間)
中国横断道(三刀屋ー尾道間)
高知道(須崎ー窪川間)
四国横断道(鳴門ー阿南間)
長崎道(長崎多良見ー長崎間)
九州横断道(嘉島ー矢部間)
東九州道(末吉財部ー清武間、佐伯ー北川間)

建設を続行すべき区間は、日本道路公団で事業中路線20兆6000億円分のうち約12兆円分、首都公団が約1兆6000億円分、阪神公団が約8000億円分。詳しくは清水草一著『この高速はいらない。』(三推社/講談社刊 1700円)を参照ください。

(解説)

 民営化には大賛成だったが、第2東名・名神などの必要な路線までも建設凍結されることに危機感を抱き、話の流れで猪瀬氏に直談判のような形となった。結果的にそれらの路線は建設されることになり、建設中止を主張した過疎路線の一部には料金無料の新直轄方式が導入され、80点くらいはつけられる民営化となった。

 結果的に数十兆円の節約になった道路公団民営化だが、現在の政権下で、その節約が1年で軽く吹っ飛ぶレベルのバラマキが行われているのを見ると、虚しくなる。


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高速道路問題 2002年6月 道路公団民営化委員会発足

日付/2011.02.02




<2002年6月 週刊SPA!より>

 

 6月28日、道路4公団の民営化のゆくえを決定するに等しい重責を担った7人委員会『道路関係4公団民営化推進委員会』の第2回会合が行われた。第1回の会合で、道路族に目の敵にされている猪瀬直樹委員が、「公開したらいいじゃないか」と提案してくれたおかげで、私も栄えある扶桑社代表として、第2回会合の模様を傍聴することができました。

 内容は、まだ会合の日程を決める程度のことで終わっちゃったんだけど、私は道路4公団の民営化そのものについては全然悲観してない。確かに負債は合計35兆円あるけど、年間売り上げが3兆円近くあるんだから、まだなんとかなる。経営についてはシロートなんで細かくは言わないが、固定資産税を免除される形にさえなれば、問題はないと思う。猪瀬私案とも言うべき行革断行評議会案(道路は日本道路保有機構が所有、それを6社に分割してリースし、賃貸料を取る方式)あたり、競争原理が働いてすばらしいじゃないか。

 巷では小泉首相の推す上下一体案か、あるいは道路族の狙う上下分離案かって騒いでるけど、この分類だと猪瀬私案は上下分離になるんだよね。そこんとこ複雑ですが、上下一体で民営化してバク大な固定資産税払うんじゃ、その分も料金取らないといけなくなるんで、これは話にならない。そこさえクリアしてくれりゃいいと思う。委員会には国鉄民営化の生き証人・松田昌士JR東日本会長みたいな人もいるし、経営形態についてはちゃんとした結論を出してくれるだろう。

 じゃ何が問題かと言うと、新規路線の建設である。現在事業化されている路線、つまり路線計画が決定している高速道路を全部建設するのに20兆6000億円かかる(ことになっているがもっと増える?)。これを現状通り、郵便貯金を原資とする借金で造ると、確実に返済で首が回らなくなる。プラス、道路族が主張している基本計画すべての建設には、さらに20~30兆円余計にかかるから、これをやったら日本は破滅か!?

 猪瀬氏は、新規路線計画はすべて廃止、建設中路線は原則ストップ、新しく高速を造る場合は、改めて第三者機関がその建設の是非を評価することを主張している。これを忠実に実行すれば、道路4公団は国鉄のように負の遺産を残すこともなく、立派に借金を返済しつつ民営化されるだろう。ただし、首都圏の大渋滞は現状のまま永遠に放置され、建設から30余年が過ぎた東名・名神は、耐用年数(60年くらい?)が尽きたらそれまでとなる。それはまずいんで、部分的には「建設は是」とせざるを得ない。じゃその建設費はどうすんのかという問題が残る。

 そこで、この私(金髪)が、年末に出る委員会の結論の前に、結論を出させていただきましょう。
 現状、日本道路公団をはじめとする道路4公団は、国から施工命令が出されたら、イヤでもその路線を建設しなきゃならない。拒否権は皆無である。しかも、今後開通する新規路線で採算が取れるものは、私の計算によるとほとんどない。北関東道と館山道が、現状の2%という低い貸出金利を前提として、なんとかギリギリ収支トントンだが、あとは全部赤字、中には金利の2割も払えないようなスーパー赤字路線もある。こんなものを造れと言われて、民営会社がウンと言えるはずがない。民営化する以上、採算の見込のない事業はできない。

 そこでだ。まず国は、建設の優先順位決定を第三者機関に委ね、必要度のきわめて高い路線を、優先順位に従って原則税金で建設する。ガソリン税などの道路特定財源は年間約6兆円。近年、高速道路建設の予算は年間1兆円強なので、いらない道路建設を節約すれば、現状の半分くらいの予算は組めるはずだ。

 通行料金も、現在のような原則全国一律ではなく、路線ごとに適正と思われる水準に設定する。地方では一般道が平均60キロで走れて、高速走っても片側1車線で80キロ制限なんで、高速走るのがあまりに割高でバカらしいからガラガラだ。しかし、東京みたいに一般道の平均速度が18キロしかないところでは、80キロで走れたらものすごい時間短縮効果がある。つまり、大都市では現状通り高くてかまわないが、地方は料金を安くしないと、建設しても無意味なわけ。まぁ新規建設は多くが都市圏の路線になるけど。

 で、建設路線と上限料金を決定した上で、分割民営化した道路会社に建設の請け負いと完成後の年間リース料を入札させ、国にとって一番条件のいいところが落札する。こうすれば、競争原理を働かせつつ、必要度の高い路線の建設だけはきちんと進む。

 ところで、民営化推進委員会は「個別路線の決定までは無理だろうと思料」されてるらしい。そこでそちらの方の判断は私がしましょう。私はすでに北海道から九州まで、現在事業中の全高速に並行する一般道を8割方実走調査し、その必要度と採算性を判定中で、年内には1冊にまとめ出版する予定だ。上の表では、必要度と採算性のそれぞれベスト3とワースト3を発表してみた。まだ鋭意精査中で暫定だが、大きく変わることはないはずだ。

 必要度と採算性では、必要度の方を優先して建設すべきだ。道路建設は基本的に公共事業で、営利事業ではないってことを忘れてはいけない。
 必要度も採算性も低い地方路線は、国道(地方を走ると、ものすごく条件がよくて、平均速度60キロ以上が可能だった国道がいくつもあった。最高は国道13号線福島ー米沢間の平均67キロ)を小改良し、制限速度を場所に応じて50~90キロに設定するという、主に道交法の改革によって解決できる。私はこれを「快速国道」と命名した。料金が高くて誰も走らない高速ができるより、タダでそれなりに速い快速国道の方がはるかに"公共の福祉"でしょ? 鳥取県知事とかも、委員会に圧力かけるのやめて、冷静に考えてもらいたい。

 世の中、政治に関してはなにやってもどーせダメなんじゃないかっていう悲観論に満ちてるけど、サッカーみたいに少し応援すべきを応援して、エールを送ったらどうかと思うね。オレは猪瀬氏にエールを送りたい。

 

(解説)

 道路4公団の民営化は十分可能、それは固定資産税のかからない上下分離で、というのは、結果的に現在の民営化の形態であり、十分うまく機能している。「上下一体でなければ道路族寄り」と報道していた当時の大マスコミの論調は、完全に誤っていたことが証明された。

 この時期私が力を入れていたのは、路線ごとの必要度の算定だった。結果としては、私が必要度が高いとした首都圏3環状や新東名・新名神などは、早期建設となり、必要度が低いとした多くの路線はおおむね後回しになった。その意味でも、民営化は十分合格点をつけられる内容なのだ。


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高速道路問題 2002年1月 11兆円街道をゆく

日付/2011.01.28



<2002年1月 週刊SPA!より>

 東京から東名を西に向かい、御殿場インターを過ぎると、右手にモダンアートのようなシュールな橋脚群が見えてくる。建設中の第2東名だ。
 中京地区の人にとってはもっと身近だろう。豊田ジャンクションはすでに9割方完成し、14年度中の開通を待つばかりだし、第2東名と第2名神の間を取り持つ伊勢湾岸道は、名古屋南ー湾岸弥富間約18キロが開通済みだ。関西在住の方も、名神の瀬田東インターの先に、第2名神と接続する草津ジャンクションが組み上がりつつあるのを見たことがあるかもしれない。
 第2東名・名神は、いつの間にか相当できている。しかし、日本道路公団民営化論議においては、建設凍結のダントツ最有力候補として、マスコミをにぎわせている。果たして今から建設凍結という名の「撤退」は可能なのか?


 まずは、これまでどれくらいお金を使ったのかを、国土交通省道路局高速国道課に尋ねてみた。
 その答えは、「13年度中に約2兆3000億円が投下」というものであった。ちなみに総事業費は11兆円。つまりすでに約2割、造ってしまっているわけだ。
 ただし、どの区間も均等に2割工事が進んでいるわけではないという。豊田東ー四日市間のように、来年度中に大部分が開通する部分もあれば、まだほとんど手つかずの区間もある。それを図示したのが、次ページの地図だ。
 実際に工事が始まっているのは、御殿場ー三ヶ日間と、豊田東ー四日市間、亀山東ー草津間である。私はそれをこの目で確認すべく、西の端・草津から行脚の旅に出た。

 草津ジャンクションから東、信楽へ向かうと、細い県道に沿って、山の斜面で延々と工事が進んでいた。「あんな斜面でどうやって‥‥」と絶句するほどの難工事に見える。
 山を越えて甲賀盆地に出ると、一転、工事の気配が薄らぎ、たんぼの真ん中に延々と赤白だんだらの杭が刺してあるだけだったりするが、ところどころに巨大な橋脚が現れ、存在感を誇示する。
 鈴鹿峠を越え、四日市へ。ここから豊田までは、最も工事が進捗している区間だ。すでに開通中の伊勢湾岸道は、3つの吊り橋で名古屋港をまたぎ、その壮麗さに思わず感動。
 豊田から引佐までは用地買収中で、まだ工事は行われていないためパス。しかし静岡県内に入ると一転進捗率が上昇する。三ヶ日JCT、天竜川橋、瀬戸川橋、富士川橋と、橋はあらかた出来上がっている。平地は多く手つかずだが、トンネルや橋など、難しい部分からどんどん工事は進んでいた。
 私は、第2東名・名神の工事が、これほど進捗しているということを、うかつにも知らなかった。そのため、「第2東名・名神は建設を凍結し、東名・名神を全線片側3車線に拡幅した方が経済的」だと以前当コラムでも主張したが、御殿場-草津間に関して言えば、国土交通省の言う"夢のハイウェイ"は、夢でもなんでもない現実であった。


 小泉内閣が決定した「日本道路公団は50年以内に建設費を償還すべし」という基本方針を達成するためには、現在すでに建設にGOが出ている高速道路の残事業費、約20兆60億円分すべての建設は不可能。が、総事業費約11兆円という第2東名・名神を凍結してしまえば、残る高速(ほとんどがド田舎路線)は、すべて建設が可能になる。「東名・名神がすでにあるのに、もう1本造るなんて贅沢だ」という道路族議員の主張は、正論に聞こえなくもない。
 しかし、小泉首相がやろうとしている構造改革の趣旨や経済原理から見たら、果たしてどうなのか。
 いま最も緊急に需要があり、建設の必要性が高いのは、首都圏の環状高速だ。首都圏にまともな環状高速が1本もないことが、どれほどの渋滞と経済的損失を生んでいるか、まったく計り知れない。
 それに次いで必要性が高いのは、東名・名神の増強なのである。
 日本の大都市がほとんど一直線に並ぶ太平洋ベルト地帯は、世界で最も輸送密度が高いと言われている。特に東京-神戸間の過密度は断然世界一だ。そこを縦断する東名・名神は、日本の貨物輸送の背骨と言うべきだが、それが大部分片側2車線しかない2級高速道路だという現実は、恐るべき綱渡りと言わざるを得ない。
 現在の東名・名神は、事故や工事、行楽時期でもない限り渋滞は少ないが、経済の安全保障を考えれば、ド田舎の高速造って地元の土建業者にカネをばらまいてないで、日本で最も古く、その分老朽化も進んいる東名・名神を増強すべきなのである。

 合計11兆円という途方もない事業費を安くする方法としては、御殿場ー草津間の部分開業を主張したい。現在用地買収および工事が進んでいるのは、御殿場-草津間のみで、東端と西端はほとんど手つかずだ。手つかずの部分の建設を中止し、中間部分だけ建設を続行するのだ。
 西端に関しては、京滋バイパスと第2京阪国道がほぼ並行して建設されているから、これが完成すれば第2名神の必要度は劇的に下がる。草津以西の建設を中止すれば、約2兆5000億円が節約できる。
 東端は、もともと海老名までしか予定されておらず、いずれにせよ東京までは接続されない。だったら、すでに東名の片側3車線化が完成している御殿場が終点でも大差はない。御殿場から東寄りの建設を中止する代わりに、現在須走までの東富士五湖道路を御殿場まで延伸して東名と接続させ、中央道と直接連絡させることで、緊急時の迂回路を確保すればいい。御殿場-海老名間の事業費は約2兆2000億円。対する東富士五湖道路の御殿場-須走間(約10キロ)の新設と全線片側2車線化は、せいぜい1000億円もあれば可能だ。

 このように、東端と西端の建設を中止することで、合計約4兆7000億円の節約が可能となる。残る事業費は6兆3000億円。そこにはすでに2兆3000億円を投入済みだから、あと4兆円あれば、十分機能する第2東名・名神が建設可能だ。
 4兆円も大金だが、現在の東名・名神と、北海道・十勝を走る道東自動車道(石原行革相が"クルマより熊の方が多い"と言ったヤツ)の交通量を比べるとどうか。
 東名・名神の昨年度の平均交通量は約7万5000台/日。対する道東道は1000台/日。その差はなんと75倍だ。
 道東道にあと7600億円使うより、第2東名・名神に4兆円使うべきだということだけは、確かである。

 

(解説)

 2002年当時、「ムダ」「凍結すべき」の大合唱にあっていた第二東名・名神(新東名・新名神)の建設現場巡回レポート。すでにこれだけできているなら、東西両端部分を除いて建設を続行した方が経済的合理性があるという結論に至っている。

 新東名・名神は、民営化論議の過程で6車線から4車線に縮小されたものの、2008年に新名神の亀山-草津間が開通し、伊勢湾岸道と相まって大きな経済効果を生んでいる。新東名も御殿場-引佐(浜松付近)が2012年度中に開通。引佐-豊田間も2014年度中に完成し、効果を発揮してくれることだろう。

 建設中に民営化が実現したことで、その後の建設費は約2割コストダウンされたことも忘れてはならない。

 なお、御殿場-海老名南間に関しては、建設を凍結し、その資金を外環道東京区間と東名の大和トンネル付近の拡幅、首都高C2のボトルネック対策に回すべきだ。


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高速道路問題 2001年8月 猪瀬試案に思う

日付/2011.01.26


<2001年8月 週刊SPA!>

 道路公団が分割民営化されたら、制限速度も自由化してくれないもんか。「ウチは140までイケます」とか!
 そんな淡い期待を抱く今日この頃ですが、我が町・杉並区が誇る若手大臣、石原伸晃行革担当相の私的諮問機関である行革断行評議会(猪瀬直樹氏ほか)が、道路4公団の統合・分割民営化試案を発表した。その骨子は、
●平成14年度以降、高速道路は工事中のものも含め新規建設をすべて凍結。建設が必要と認められる場合は、すべて国や地方自治体の直轄事業として、つまり国道や県道と同じ扱いで全額税金で建設する。
●全高速道路を6つの運営会社に分割し、年間約2兆円の賃貸料を取って、現在までの累積債務38兆円を返済する。
●料金の値上げは禁止だが値下げはOK。となっている。
 これにより、料金の値上げも税の投入も一切なしに、30年間で債務を全額返済でき、その後は料金を現行の数分の1に値下げすることができるという。

 この案は本当に可能なのか?
 可能です。なぜなら、決算表を見れば明らかなんだけど、4公団の合計収支は毎年バク大な黒字だから。本四公団だけは大赤字だが、圧倒的に規模の大きいJHは年間2兆円近い黒字(国助成分も含む)である。最近新聞等でJHが第2の国鉄になると騒がれているのは、現在計画されているすべての高速を完成させちゃうとそうなっちまうということであって、新規建設を凍結し4公団を統合すれば、民営化しなくたって十分償還できるのだ。
 しかし、民営化した方が経営努力もするしサービスも良くなるので、そっちの方がいいに決まってる。つまりこの試案は、至極真っ当なことを言っているにすぎない。

 分割の仕方もなかなかシブい。国鉄の分割民営化は、単に地域ごとに分けただけだったので、平行する路線の競争原理が働かなかったが、高速道路の場合、この分割案に従うと、平行して走る東名と中央、名神と東西名阪、中国と山陽、東北と常磐がそれぞれ別会社の割り当てになる。つまり民営化によってSAのサービスや料金までもが競争になるわけで、高速の旅がいままでより快適になることは確実だ。民間会社だけに「今度の帰省は〇〇高速で!」と言ったCMなんかも始まるだろうし、ジャンクションでは「メシのうまい〇〇SAはこちら」「安い! 速い! 〇〇高速」という案内看板が出たり、考えただけで楽しいじゃないか。

 ただ、巨大な問題がひとつ残っている。今後の高速道路建設をすべて凍結するという点だ。
 もちろんド田舎のキツネやタヌキしか走らないような高速は、これ以上造ってもらいたくない。しかし、首都圏のように、需要がありすぎて渋滞している場所もあるわけだ。これがすべて凍結されてしまっていいものか?
 たとえば首都高速の中央環状線は、死んでも建設を続行すべきだが、全線完成までにはあと2兆円ほどかかる。外環道もまたしかり。圏央道だってぜひとも必要だ。この3環状の建設だけで合計9兆円程度かかるが、これは小泉首相の「都市再生プラン」の目玉のひとつにあげられているほどで、建設を凍結するなどもってのほか。

 北関東自動車道も、全線完成まであと6500億円かかるが、首都圏の第4の環状線として建設すべきだ。つまり、首都圏だけで約10兆円。これを全額税金で建設するのは不可能だろう。
 地方で必要度の高いのは、第2東名と第2名神である。なにしろ東名と名神の交通量は圧倒的で、この2本だけでド田舎のキツネ・タヌキ専用高速すべての赤字をまかなってもお釣りがドバッと年間3000億円来るほどの稼ぎ頭だ。いわば日本の輸送の生命線なわけで、ここを増強せずにド田舎に造るということ自体がすでにメチャクチャなのである。
 しかし、第2東名・名神はほとんど全線険しい山地に計画されており、現在予定されている事業費だけでも9兆2930億円。これはあまりにも巨額で、いっかな東名・名神でも到底ペイしない。
 そこで私は、第2東名・名神は、伊勢湾岸道部分を除いて建設を凍結し、現行の東名・名神を全線片側3車線に拡幅することを提案したい。これなら合計3兆円程度で済む計算で、将来の人口の減少等を考えれば、もっとも適切な規模の投資だろう。

 つまり、国土交通省計画の総合計44兆円は論外としても、あと約13兆円の高速道路への投資は、日本の将来のために必要なのである。
 そこで私としては、基本的に猪瀬試案でいいのですが、「30年間で償還」という部分を「40年以内」に延ばしていただいて、追加建設費13兆円の償還は、税金と通行料とで5:5の割合で負担するというのでいかがでしょう。非常に現実的かつ前向きだと思うのですが。

 

(解説)

 猪瀬直樹氏が道路公団民営化委員に任命される前、こういった革新的な試案を提出していたことは、今やすっかり忘れられている。しかし、競争原理の働く地域分割は、今回の民営化で成し遂げられなった最大の重要ポイントなのである。

 一方私は、「必要な路線もある」と、この時点で全線の建設凍結に反対している点に注目していただきたい。この頃世論は、「高速道路建設は悪」という極論ばかりだった。


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高速道路問題 2001年11月 オレを第三者機関に入れろ

日付/2011.01.23




<2001年11月 週刊SPA!>

 永田町を揺るがしていた道路公団民営化問題が、一応の決着を見た。「4公団は民営化、建設費の償還期間は50年以内とし、未開通区間の建設に関しては第三者機関で検討」ということで、ワタクシのような都市在住者は、いつも使ってるド黒字路線の収益によるド田舎のキツネ・タヌキ専用高速の建設に一定の歯止めがかかったことを喜ばしく思います。
 ところで、今いったいどれくらい高速道路が開通してるのか。日本地図をパッと見ると、地方に関してはすでに十分満足すべきレベルに達していると思うのです。私はほとんどの県庁所在地をクルマで走っておりますが、本当に不便だなぁと思ったのは鳥取市のみ。47都道府県の県庁所在地で、まだ高速道路と無縁なのは鳥取市のみである。あとの46都市はすでにバッチリだ。
 償還期間が50年以内で決着したということで、自民党の建設族は「これで現在の整備計画の未開通区間2383キロは大部分建設できる」とほくそ笑んでいるらしいが、とんでもない話だ。なぜなら、その残った区間というのは、現状の料金水準では到底需要が見込めない路線が大部分だからだ。

 日本の道路行政の最大の問題点は、需要を無視した過剰な平等主義にある。旭川ー稚内間であっても、基本的には東名と同じ片側2車線で建設し、距離あたり料金も同じ(大都市近郊は2割高いが)に設定されている。こんなメチャクチャな話があるだろうか!? 稚内にも山手線走らせろって言ってるのと同じだぜ。

 もうひとつ気になるのは、法律上の「高速自動車国道」のことばかり議論されていて、「一般国道自動車専用道路」がどうなるか全然わからないことだ。この二者、形態としては全然同じ高速で、非常に区別が難しいが、第三京浜や本四連絡橋など、全国プール制に入らず独立採算で建設されるのが「一般」です。この「一般」の方が、「高速」よりさらに問題の多い予定路線が多く、たとえば旭川から紋別とか、苫小牧から浦河とか、三陸沿岸とか、絶句するしかない。こちらも第三者機関で判断するならば、メンバーに選ばれる方には、正常な神経を持って判断していただきたい。

 オレはね、地方にはもう1キロたりとも高速を造るなとは言わないよ。ただ、今のような構造と料金水準の高速を平等に張り巡らせても意味がないのは確かだ。需要が少なく、タダの国道を走っても用が足りる地方には、身の丈にあった高速を造るべきだ。これをイギリスに倣って「準高速」と呼ぼうか。イギリスの準高速は、これで高速とどこが違うねん! という立派なものだが、日本のそれは、たとえば登坂路を除いて片側1車線限定、信号の設置も可としたバイバスに近いものとする。料金は半額程度~部分的に無料。こういうものを造れば、「高速なんか1回も使ったことがないっぺ」という地方のオジチャンオバチャンも喜び、物流にも資する。前述の中国道ー鳥取市間とか、秋田ー新潟間、大分ー延岡間など、東名と同規格の高速造るより、この方がずっと役に立つ。

 ところで、東京湾アクアラインの料金が4000円から3000円に値下げされて、交通量がどのように変化したか、ごぞんじでしょうか。
 料金が4分の3になったから、交通量は3分の4、つまり33%増えないと料金収入は減ってしまう計算だったのですが、現在のところ、ちょうど33%くらい増えているのです。つまり元手ゼロで経済効果や渋滞緩和効果(東関道や京葉道路の)が上がったわけだ。確かに3000円になって以来、休日のアクアラインの交通量は確実に増えている。ちょっと前までいつ走っても北朝鮮の高速みたいだったのに。
 私は拙著『首都高はなぜ渋滞するのか』の中で、"アクアラインを3000円に値下げしても2割くらいしか交通量は増えないが、1000円にすれば4倍になると"予測していたのですが、いい方に予想が外れました。世界三大無用の長物とまで言われる東京湾アクアラインも、料金を下げれば確実に利用者はいることが証明されわけだ。
 なら今度は2000円にしてみたらどうか。いや思い切って1000円にすべきじゃないか。交通量がそれぞれ2倍、4倍になれば、元手ゼロで経済効果&渋滞緩和効果が上がるわけだ。これが構造改革というものでしょう。

 ド赤字で国費投入が検討されている本四連絡橋も、思い切って値下げしてみたらどうか。建設費を料金収入で償還するなんてのは、夢のまた夢だと認め、交通量増加による経済効果を優先し、それでいて料金収入もあまり減らないような、市場経済に即した値付けをすべきじゃないか。
 地方のスカスカ高速も同じ。東名と同じ料金取るのがどだい間違ってる。イタリアは南に行くと高速がほとんどタダになる。南イタリアはビンボーで、カネ取ったら誰も走らないからである。それと同じで、八戸道とか秋田道とか米子道とか浜田道とか、そういう路線は最初から採算取れっこないんだから、料金を安くして経済効果を優先すべきだ。じゃないと、造った意味がない。
 結論としては、第三者機関とやらにオレを入れろ! ということですね。いいこと言うぜ。

  極論すれば、現状の計画をそのまま継続すべきなのは、首都圏の3環状高速(首都高中央環状線、外環道、圏央道)と北関東道くらい。
 第2東名・名神に関しては、費用対効果の観点から、東名・名神の全線3車線化と名阪国道の増強、舞鶴道のバイパス化などで対応する。
 残された地方路線は、ミニ新幹線的な準高速へ転換すべきだ。とにかくオレを第三者機関に入れろ。金髪だが。


(解説)

 道路公団民営化委員会が発足する少し前、「金髪だがオレをそれに入れろ」とギャグで言っております。当時私は金髪にしていました。しかし主張する内容は、今から見ても至極まっとうであったと胸を張れます。

 地方の高速は規格を落として料金を安く、あるいは無料にせよというのは、現在の新直轄区間に相当します。また、当時から路線ごとに料金レベルに差をつけることを主張しています。

 アクアラインの料金については、現在ついに800円になっていますが、さすがに下げ過ぎで、料金収入は4割減になっています。2320円までは、値下げを交通量の増加でほぼ補えていました。


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