MJアーカイブス

メーカー一覧:  車種一覧:

高速道路問題 2002年12月 森永卓郎氏と対談

日付/2011.02.13



<2002年12月 週刊SPA!より>

 道路公団民営化委員会の答申発表直後、その評価を巡って経済評論家の森永卓郎氏と対談した時の記事です。

清水 森永さんは民営化委員会の最終答申をどう見ますか。
森永 ほぼパーフェクトと言っていいんじゃないですか。
清水 まったく、驚くほど正論の羅列ですよね。民営化委員会が発足するまでは、世間が正論を知らなかった。その正論を公開論議で知らしめただけでも、大変な意義があったし、答申内容は感動的ですらあります。
森永 ただ、あの5分割案は残念だな。

完璧な正論の最終答申だが
分割案だけが意味不明!

清水 そうなんですよ。なぜあんな分割案になってしまったんだろう。
森永 あれなら、猪瀬さんの行革断行評議会でしたっけ、あそこの案の方がずっとよかったですよ。
清水 本当にそうなんですよ! あの案は、東名と中央、山陽と中国、東北と常磐は別会社の割り当てで、しっかり競争原理が働くようになっていた。なのに出てきたのは、JRの分割を元にしたらしきシロモノで、東名も中央も名神も名阪も全部中日本会社です。どういう意図であんな分割案が出てきたんでしょう。
森永 そこがまったくわからないんですよ。
清水 JR東日本会長の松田委員が、自分の成功体験に固執したんでしょうか。「方面別の競争原理が働く」って言ってるけど、方面別じゃ大した競争にならない。並行する路線で競争しないと。関西の鉄道は京都ー大阪ー神戸間を並行して走ってるから、すごいスピードアップ競争で、130キロ運転をしてるでしょう。でも関東は方面別だから、数十年間、スピードアップがない。
森永 私は所沢なんですけどね、2本走ってる私鉄が両方とも西武なんですよ(笑)。競争がないんで、どんどん遅くなってる。本当にフザケンナと言いたいですね。どっちか京王か小田急か、どこでもいいから取り替えっこしてもらいたい。京王の特急なんか、新宿ー八王子間でJRと競争してるから、脱線するんじゃないかって勢いで走ってるのに。
清水 京浜急行の快速特急なんて、カーブでは真剣に脱線寸前の頑張り方です(笑)。あれ見ると、やればできるんだって思いますね。

経営形態よりも、
競争の有無が大事

森永 重要なのは、経営形態より競争なんですよ。たとえば羽田は国営、成田は公団、関空は株式会社だけど、お互い競争してないから、どの空港も似たようなもんでしょう。ところが、宅急便が出てきたおかげで、郵政省のゆうパックはすごくよくなった。競争があれば、誰だって真剣に考えるんです。やる気にさせることが大切なんです。そういう意味で、清水さんの分割案はよくできてますよ。
清水 並行路線は別会社にしないと無意味ですよね。
森永 それとね、猪瀬さんが言ってたんだけど、耐震設計の手を抜けば、建設費が3分の1になるんだって(笑)。震度6が来たら壊れるチャチイ高速を造るのも、民営会社なら戦略でしょう。韓国のゼネコンにやらせるとか、アジアの労働力を使うとかいった手もある。
清水 それはすごい手だ。
森永 本当に重要な路線はもうできてるんだし、第2東名なんて、壊れたって第1があるんだから(笑)。そりゃリスクはあるけど、それは利用者が判断すればいい。私なら、震度6で壊れるかもしれなくても、料金3割引の方を使いますね。

敗れた"事務局案"でも
夢のような前進だ

森永 ただ、最終答申がそのまま法案になって国会を通ることはあり得ない。最後まで揉めた、いわゆる事務局案の方がせいぜいです。
清水 事務局案でも、今までに比べたら夢のような前進なんですよね。「料金収入の約5分の1を新規建設に充てる」ってことになったって、民営会社なら一番儲かりそうなところに投資するし、借金じゃなくキャッシュで造るんだから、トータルの建設費は大幅に安くなる。僕はあの案でも十分だと思ってたんですけど、世間はそう思ってない。
森永 そう。そこまでわかってる人は1%もいない。あれはとんでもない道路族寄りの案だと思ってますよ。
清水 いま道路族が主張してるのは、民営化までに3兆、民営会社が10兆、道路特定財源から3兆でしょう。それだって、以前の20兆6千億円全額道路公団が出すよりは、はるかに前進だ。道路族はすでに譲歩を余儀なくされているわけですよね。
森永 ものすごい譲歩ですよ。なにしろあいつら、4全総のあとは5、6、7と永久にやるつもりだったんだから(笑)。それを、そろそろこのあたりが限界だってわからせただけでも前進です。
清水 僕は、最終答申がいわゆる妥協案になった方が、かえってよかったんじゃないかとも思うんですが。

猪瀬さんは
全部わかっていた

森永 その辺、猪瀬さんは全部わかってたから、最後、水面下で懸命に妥協を模索したでしょう。ところが松田、大宅、川本委員が単細胞だった。正論で突っ走っるのは簡単なんですよ。逆に猪瀬さんには、分案割についてはもうちょっと突っ張ってほしかった。そこが猪瀬直樹の最大の後退ですね。
清水 あの分割案だけは、なんだこりゃって感じですよね。
森永 そのへん、最終答申も甘い面があるんで、もう1回やった方がいいんじゃないかな(笑)。でも、一番許せないのは小泉首相ですよ。
清水 そうなんですか?
森永 今井委員長は、国会で通る答申をしようとしただけなのに、最後に小泉首相にはしごを外されて辞任に追い込まれて、道路族寄りで無責任な最低のヤツ、ってことになっちゃった。結局、小泉首相は風を見ていたんですよ。それで最後に「国会を通る通らないは考えなくていい」と言って、今井委員長をばっさり斬った。1年後、できた法案が事務局案ベースだったら、小泉は抵抗勢力に屈したと、マスコミはボコボコにしますよ。その時は石原行革大臣が斬られる。
清水 なんだかんだで全部元の木阿弥になるのが一番怖いんですけど。

(清水分割案)

 日本の大都市は一直線上に位置しているため、交通量の多い幹線ほど競争原理が働きやすい。南日本会社に東名/名阪&第2名神/山陽を配し、西日本会社に中央&第2東名/名神/中国を配する。九州は、未完成の東九州道を、最も収益率の高い南日本会社に分割する。東京ー長野間は、西日本会社と北日本会社の競合。常磐道は現在広野までだが、東北道と分割すれば、仙台までの延伸によって東京ー仙台間に競争原理が働くようになる。事業規模も収益率も、拡大阪神を除いてほぼ揃う。

 

(解説)

 民営化委員会の答申について覚えている人はあまりいないと思うが、内容は極めて正論で、それについては私も森永氏も同意見。ただ分割案だけは元の猪瀬案から大きく後退し、日本道路公団については、現在の3分割案ほぼそのままになっていた(本四公団は西会社に吸収)。それについて森永氏は、「競争原理が一番大事」と核心を突いた。