
<2002年1月 週刊SPA!より>
東京から東名を西に向かい、御殿場インターを過ぎると、右手にモダンアートのようなシュールな橋脚群が見えてくる。建設中の第2東名だ。
中京地区の人にとってはもっと身近だろう。豊田ジャンクションはすでに9割方完成し、14年度中の開通を待つばかりだし、第2東名と第2名神の間を取り持つ伊勢湾岸道は、名古屋南ー湾岸弥富間約18キロが開通済みだ。関西在住の方も、名神の瀬田東インターの先に、第2名神と接続する草津ジャンクションが組み上がりつつあるのを見たことがあるかもしれない。
第2東名・名神は、いつの間にか相当できている。しかし、日本道路公団民営化論議においては、建設凍結のダントツ最有力候補として、マスコミをにぎわせている。果たして今から建設凍結という名の「撤退」は可能なのか?
まずは、これまでどれくらいお金を使ったのかを、国土交通省道路局高速国道課に尋ねてみた。
その答えは、「13年度中に約2兆3000億円が投下」というものであった。ちなみに総事業費は11兆円。つまりすでに約2割、造ってしまっているわけだ。
ただし、どの区間も均等に2割工事が進んでいるわけではないという。豊田東ー四日市間のように、来年度中に大部分が開通する部分もあれば、まだほとんど手つかずの区間もある。それを図示したのが、次ページの地図だ。
実際に工事が始まっているのは、御殿場ー三ヶ日間と、豊田東ー四日市間、亀山東ー草津間である。私はそれをこの目で確認すべく、西の端・草津から行脚の旅に出た。
草津ジャンクションから東、信楽へ向かうと、細い県道に沿って、山の斜面で延々と工事が進んでいた。「あんな斜面でどうやって‥‥」と絶句するほどの難工事に見える。
山を越えて甲賀盆地に出ると、一転、工事の気配が薄らぎ、たんぼの真ん中に延々と赤白だんだらの杭が刺してあるだけだったりするが、ところどころに巨大な橋脚が現れ、存在感を誇示する。
鈴鹿峠を越え、四日市へ。ここから豊田までは、最も工事が進捗している区間だ。すでに開通中の伊勢湾岸道は、3つの吊り橋で名古屋港をまたぎ、その壮麗さに思わず感動。
豊田から引佐までは用地買収中で、まだ工事は行われていないためパス。しかし静岡県内に入ると一転進捗率が上昇する。三ヶ日JCT、天竜川橋、瀬戸川橋、富士川橋と、橋はあらかた出来上がっている。平地は多く手つかずだが、トンネルや橋など、難しい部分からどんどん工事は進んでいた。
私は、第2東名・名神の工事が、これほど進捗しているということを、うかつにも知らなかった。そのため、「第2東名・名神は建設を凍結し、東名・名神を全線片側3車線に拡幅した方が経済的」だと以前当コラムでも主張したが、御殿場-草津間に関して言えば、国土交通省の言う"夢のハイウェイ"は、夢でもなんでもない現実であった。
小泉内閣が決定した「日本道路公団は50年以内に建設費を償還すべし」という基本方針を達成するためには、現在すでに建設にGOが出ている高速道路の残事業費、約20兆60億円分すべての建設は不可能。が、総事業費約11兆円という第2東名・名神を凍結してしまえば、残る高速(ほとんどがド田舎路線)は、すべて建設が可能になる。「東名・名神がすでにあるのに、もう1本造るなんて贅沢だ」という道路族議員の主張は、正論に聞こえなくもない。
しかし、小泉首相がやろうとしている構造改革の趣旨や経済原理から見たら、果たしてどうなのか。
いま最も緊急に需要があり、建設の必要性が高いのは、首都圏の環状高速だ。首都圏にまともな環状高速が1本もないことが、どれほどの渋滞と経済的損失を生んでいるか、まったく計り知れない。
それに次いで必要性が高いのは、東名・名神の増強なのである。
日本の大都市がほとんど一直線に並ぶ太平洋ベルト地帯は、世界で最も輸送密度が高いと言われている。特に東京-神戸間の過密度は断然世界一だ。そこを縦断する東名・名神は、日本の貨物輸送の背骨と言うべきだが、それが大部分片側2車線しかない2級高速道路だという現実は、恐るべき綱渡りと言わざるを得ない。
現在の東名・名神は、事故や工事、行楽時期でもない限り渋滞は少ないが、経済の安全保障を考えれば、ド田舎の高速造って地元の土建業者にカネをばらまいてないで、日本で最も古く、その分老朽化も進んいる東名・名神を増強すべきなのである。
合計11兆円という途方もない事業費を安くする方法としては、御殿場ー草津間の部分開業を主張したい。現在用地買収および工事が進んでいるのは、御殿場-草津間のみで、東端と西端はほとんど手つかずだ。手つかずの部分の建設を中止し、中間部分だけ建設を続行するのだ。
西端に関しては、京滋バイパスと第2京阪国道がほぼ並行して建設されているから、これが完成すれば第2名神の必要度は劇的に下がる。草津以西の建設を中止すれば、約2兆5000億円が節約できる。
東端は、もともと海老名までしか予定されておらず、いずれにせよ東京までは接続されない。だったら、すでに東名の片側3車線化が完成している御殿場が終点でも大差はない。御殿場から東寄りの建設を中止する代わりに、現在須走までの東富士五湖道路を御殿場まで延伸して東名と接続させ、中央道と直接連絡させることで、緊急時の迂回路を確保すればいい。御殿場-海老名間の事業費は約2兆2000億円。対する東富士五湖道路の御殿場-須走間(約10キロ)の新設と全線片側2車線化は、せいぜい1000億円もあれば可能だ。
このように、東端と西端の建設を中止することで、合計約4兆7000億円の節約が可能となる。残る事業費は6兆3000億円。そこにはすでに2兆3000億円を投入済みだから、あと4兆円あれば、十分機能する第2東名・名神が建設可能だ。
4兆円も大金だが、現在の東名・名神と、北海道・十勝を走る道東自動車道(石原行革相が"クルマより熊の方が多い"と言ったヤツ)の交通量を比べるとどうか。
東名・名神の昨年度の平均交通量は約7万5000台/日。対する道東道は1000台/日。その差はなんと75倍だ。
道東道にあと7600億円使うより、第2東名・名神に4兆円使うべきだということだけは、確かである。
(解説)
2002年当時、「ムダ」「凍結すべき」の大合唱にあっていた第二東名・名神(新東名・新名神)の建設現場巡回レポート。すでにこれだけできているなら、東西両端部分を除いて建設を続行した方が経済的合理性があるという結論に至っている。
新東名・名神は、民営化論議の過程で6車線から4車線に縮小されたものの、2008年に新名神の亀山-草津間が開通し、伊勢湾岸道と相まって大きな経済効果を生んでいる。新東名も御殿場-引佐(浜松付近)が2012年度中に開通。引佐-豊田間も2014年度中に完成し、効果を発揮してくれることだろう。
建設中に民営化が実現したことで、その後の建設費は約2割コストダウンされたことも忘れてはならない。
なお、御殿場-海老名南間に関しては、建設を凍結し、その資金を外環道東京区間と東名の大和トンネル付近の拡幅、首都高C2のボトルネック対策に回すべきだ。





