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高速道路問題 2001年8月 猪瀬試案に思う

日付/2011.01.26


<2001年8月 週刊SPA!>

 道路公団が分割民営化されたら、制限速度も自由化してくれないもんか。「ウチは140までイケます」とか!
 そんな淡い期待を抱く今日この頃ですが、我が町・杉並区が誇る若手大臣、石原伸晃行革担当相の私的諮問機関である行革断行評議会(猪瀬直樹氏ほか)が、道路4公団の統合・分割民営化試案を発表した。その骨子は、
●平成14年度以降、高速道路は工事中のものも含め新規建設をすべて凍結。建設が必要と認められる場合は、すべて国や地方自治体の直轄事業として、つまり国道や県道と同じ扱いで全額税金で建設する。
●全高速道路を6つの運営会社に分割し、年間約2兆円の賃貸料を取って、現在までの累積債務38兆円を返済する。
●料金の値上げは禁止だが値下げはOK。となっている。
 これにより、料金の値上げも税の投入も一切なしに、30年間で債務を全額返済でき、その後は料金を現行の数分の1に値下げすることができるという。

 この案は本当に可能なのか?
 可能です。なぜなら、決算表を見れば明らかなんだけど、4公団の合計収支は毎年バク大な黒字だから。本四公団だけは大赤字だが、圧倒的に規模の大きいJHは年間2兆円近い黒字(国助成分も含む)である。最近新聞等でJHが第2の国鉄になると騒がれているのは、現在計画されているすべての高速を完成させちゃうとそうなっちまうということであって、新規建設を凍結し4公団を統合すれば、民営化しなくたって十分償還できるのだ。
 しかし、民営化した方が経営努力もするしサービスも良くなるので、そっちの方がいいに決まってる。つまりこの試案は、至極真っ当なことを言っているにすぎない。

 分割の仕方もなかなかシブい。国鉄の分割民営化は、単に地域ごとに分けただけだったので、平行する路線の競争原理が働かなかったが、高速道路の場合、この分割案に従うと、平行して走る東名と中央、名神と東西名阪、中国と山陽、東北と常磐がそれぞれ別会社の割り当てになる。つまり民営化によってSAのサービスや料金までもが競争になるわけで、高速の旅がいままでより快適になることは確実だ。民間会社だけに「今度の帰省は〇〇高速で!」と言ったCMなんかも始まるだろうし、ジャンクションでは「メシのうまい〇〇SAはこちら」「安い! 速い! 〇〇高速」という案内看板が出たり、考えただけで楽しいじゃないか。

 ただ、巨大な問題がひとつ残っている。今後の高速道路建設をすべて凍結するという点だ。
 もちろんド田舎のキツネやタヌキしか走らないような高速は、これ以上造ってもらいたくない。しかし、首都圏のように、需要がありすぎて渋滞している場所もあるわけだ。これがすべて凍結されてしまっていいものか?
 たとえば首都高速の中央環状線は、死んでも建設を続行すべきだが、全線完成までにはあと2兆円ほどかかる。外環道もまたしかり。圏央道だってぜひとも必要だ。この3環状の建設だけで合計9兆円程度かかるが、これは小泉首相の「都市再生プラン」の目玉のひとつにあげられているほどで、建設を凍結するなどもってのほか。

 北関東自動車道も、全線完成まであと6500億円かかるが、首都圏の第4の環状線として建設すべきだ。つまり、首都圏だけで約10兆円。これを全額税金で建設するのは不可能だろう。
 地方で必要度の高いのは、第2東名と第2名神である。なにしろ東名と名神の交通量は圧倒的で、この2本だけでド田舎のキツネ・タヌキ専用高速すべての赤字をまかなってもお釣りがドバッと年間3000億円来るほどの稼ぎ頭だ。いわば日本の輸送の生命線なわけで、ここを増強せずにド田舎に造るということ自体がすでにメチャクチャなのである。
 しかし、第2東名・名神はほとんど全線険しい山地に計画されており、現在予定されている事業費だけでも9兆2930億円。これはあまりにも巨額で、いっかな東名・名神でも到底ペイしない。
 そこで私は、第2東名・名神は、伊勢湾岸道部分を除いて建設を凍結し、現行の東名・名神を全線片側3車線に拡幅することを提案したい。これなら合計3兆円程度で済む計算で、将来の人口の減少等を考えれば、もっとも適切な規模の投資だろう。

 つまり、国土交通省計画の総合計44兆円は論外としても、あと約13兆円の高速道路への投資は、日本の将来のために必要なのである。
 そこで私としては、基本的に猪瀬試案でいいのですが、「30年間で償還」という部分を「40年以内」に延ばしていただいて、追加建設費13兆円の償還は、税金と通行料とで5:5の割合で負担するというのでいかがでしょう。非常に現実的かつ前向きだと思うのですが。

 

(解説)

 猪瀬直樹氏が道路公団民営化委員に任命される前、こういった革新的な試案を提出していたことは、今やすっかり忘れられている。しかし、競争原理の働く地域分割は、今回の民営化で成し遂げられなった最大の重要ポイントなのである。

 一方私は、「必要な路線もある」と、この時点で全線の建設凍結に反対している点に注目していただきたい。この頃世論は、「高速道路建設は悪」という極論ばかりだった。