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高速道路問題 2010年2月 無料化社会実験の是非

日付/2010.08.30


高速道路無料化実験区間は、割と真っ当な選択だ


 民主党の高速道路無料化社会実験の評判が極めて悪い。曰く、「地方の交通量の少ないコマ切れ路線や盲腸線ばかりが目につき、これで社会実験になるのか」とか、「経済効果についてはまったく疑問だ」とか。
 しかし、これらの路線をおおむねすべて走り、かつ並行する一般道も実走した経験のある私に言わせれば、1000億円という予算を考えると、この実験区間の選定には70点くらいつけられる。道路官僚の皆様が、データと首っ引きで一生懸命考えたのがよくわかる。


地方のコマ切れ路線だからこそ
無料化する必要がある

 まず、「地方の交通量の少ないコマ切れ路線や盲腸線ばかりが目につく」という指摘だが、逆である。コマ切れ路線や盲腸線だからこそ、有料じゃ利用価値がないんじゃないか。コマ切れ路線や盲腸線だからこそ、無料化する必要があるのだ!

 たとえば山陰道。名和ICから出雲ICまで開通しているが、この高速、以前から無料区間と有料区間が混在している。無料区間は最大2万5千台/日の交通量があるが、有料区間はそれが8千~2千台へと恐ろしいほど下がっちゃう。みんなタダの区間だけ走って、有料区間は国道を使うからだ。山陰の平均収入の低さを考えれば当然の行動だ。おかげで朝夕は国道が渋滞する。
 でも全部通して無料になれば、地域の人はかなり便利になるんだよ! そりゃさ、その経済効果なんざ微々たるもんだろうし、それで地域の景気がよくなるわけじゃないけど、せっかくあるモンを使って、時間やガソリンを節約するのは、間違いなくいいことじゃないか! 

 コマ切れの東九州道もすべて無料区間になっているが、そっちにも似たような効果が期待できる区間がある。

 新潟県の日本海東北道の無料化も、大いに効果が期待できる。ここは、並行する新新バイパスが膨大な交通量を抱え、朝夕の渋滞は深刻なのだ。しかし並行する高速がタダになれば、渋滞は大幅に緩和されるだろう。

 もちろん、疑問の残る区間もある。秋田県ではなぜ河辺JCT-秋田中央IC間が有料区間で残されたのかとか、安房峠はなぜタダにするのかとか。首都圏では、新湘南バイパスと西湘バイパスが無料になるが、その間の平塚―大磯間は高速がなく、結局そこで国道が大渋滞するので、両端の高速をタダにしたところで効果はほとんどなかろう。「首都圏にも多少無料区間がないと」という意図が透けて見える。

 しかし全体としては、無料化しても渋滞が発生しない、利用価値の低い区間をタダにするというのは至極まっとうな選択だ。それを批判するマスコミこそ、高速道路の実情を何もわかっていない。混んでる路線をタダにする実験なんざ、いいことあるわけないんだからやる必要なんかないだろうが!


最大の問題点は
通勤割引の廃止だ

 しかし、より大きな問題は別にある。
 民主党は、現在の複雑な割引をすべて廃止し、もちろん土日休日の「1000円高速」もやめ、全日2000円上限(普通車の場合)を検討中と伝えられていることだ。
 現在、通勤割引や深夜割引には、年間約5000億円の税金が投入されている。プラス、「1000円高速」は2年間限定ながら年2500億円、合計7500億円。無料化社会実験の1000億円なんかより全然予算規模がデカいのだ!

 中でも問題なのは、通勤割引の廃止だ。通勤割引とは、朝夕の時間帯、利用距離100キロ以内に限って、料金を5割引きするという一種の短距離割引制度。日常的に使う人が割引の恩恵を受ける通勤定期みたいなものだ。これができたことで、地方都市の通勤車がかなり高速に流れ、一般道の渋滞が緩和された。

 ところがこれを廃止して、上限2000円に統一されたとしたらどうなるか。割引されるのは長距離客だけになるじゃないか! 通勤でクルマを使わざるを得ない地方の人には大きな打撃だ。もちろん朝夕の一般道の渋滞は悪化する。
 長距離だけを割引するということは、「長距離はクルマがおトク!」になるってことだ。現状、鉄道や飛行機が担っている部分が、クルマに転換することになる。飛行機はともかく、鉄道のエネルギー効率は自家用車の10倍近い。その利用客がクルマに流れたら、二酸化炭素25%減つー鳩山さんの無謀な目標に完全に逆行するじゃないか!

 無料化実験以外の割引制度がどうなるか執筆時点では未発表だが、これは日本の交通役割分担の方向性を決める重要項目だ。日本の将来を考えたら、高速道路は、短距離割引に特化するのがあるべき姿。たとえば地方では「50キロまでは7割引き」とか。大都市部には割引なんざ必要ない。電車があるだろが!

(2010年2月 週刊SPA! より抜粋)