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高速道路問題 2010年1月 猪瀬直樹氏インタビュー

日付/2010.08.30




民主党は道路公団民営化のプロセスをよく勉強せよ!

 

 高速道路無料化、ガソリン・軽油の暫定税率廃止を巡って、民主党が迷走しいている。マニュフェストを見直すのはいいが、その先なにを目指すのか、その戦略がまったく見えなくなっている。そこで、道路公団民営化の立役者である猪瀬直樹氏にインタビューして意見を聞いた。

 

小沢一郎の狙いは
日本道路公団の復活だ

清水「猪瀬さんは民主党の動きをどうご覧になってますか」
猪瀬「そもそも無料化案がどこから出てきたのかと言えば、2003年に当時民主党代表だった菅直人さんが言い出したことだ。その頃僕は道路公団を民営化してムダを削ることを目指していたから、無料化というのはまったく違うと、民主党幹事長だった岡田さん(現外務相)に電話したんだが、結局民主党内で議論が深まらないまま、ずーっとマニフェストに残っていて、政権交代を迎えてしまったんだ」
清水「マニフェストでは謳ったけれど、フタを開けてみたら世論の支持は低いし、財源はない」
猪瀬「それで小沢さんが、暫定税率維持と同時に、『地方では道路建設の要望が強いから、新直轄方式をやめて全部高速道路会社にやらせる』と、旧道路公団に戻すようなことを言い出したわけだ」
清水「新直轄というのは、地方の不採算路線を国と地方が税金を出し合って建設して料金を無料にするスキームですよね」
猪瀬「それを廃止して、国から高速道路会社に予算を回して造らせるというのは、旧道路公団そのものだ」
清水「新直轄方式だと4分の1は地方が建設費を出さなきゃならないのを、全部国が面倒見るという"天からのプレゼント"に戻す......」
猪瀬「暫定税率も廃止しない、高速道路は道路公団に戻すとなれば、すべて元に戻るだけじゃないか。小沢さんは選挙に勝てばいいんだろうけど、国としての見通しがなにもない。単なる選挙対策だよ」

もともと無理だった
高速道路無料化

清水「無料化が悪しき官営化だとすれば、これは日本列島改造論へのプチ回帰みたいなもんで、さすが角栄直系の小沢さんらしいですね」
猪瀬「無料化の急先鋒だった馬渕国土交通副大臣は、小沢さんにはしごをはずされたな」
清水「当初は来年度の無料化社会実験の予算を6000億円要求していたのに、1000億円まで減らされましたからね。馬渕さんのメールマガジンからは、憤懣やるかたなしの胸の内が感じられましたが」
猪瀬「もともと暫定税率撤廃と無料化を同時にやるなんて無理だったんだ。暫定税率を復活させた小沢さんは、それがよくわかっていた。ただ、彼の思惑は地方の道路を造ることだ。菅さんや馬渕さんの無料化論には現実性はまったくない。一方小沢さんの主張は地方の現実性しかない。都市部は報われないよ」
清水「前原国交相はどうなんでしょう?」
猪瀬「前原さんはもともと、上下一体での民営化論者だったんだ」
清水「民営化論議の時、上下一体じゃないと骨抜きだ、と大マスコミが盛んに書きましたが」
猪瀬「上下一体なんて道路公団そのものだ。何も変わらない」
清水「上下一体で民営化して道路の所有権を会社に持たせたら、毎年数千億円も固定資産税を払わなきゃならないわけで、経営が成り立つわけないんですよね。『そのためにまず7兆円国費を投入する必要がある』なんて、本末転倒なことも言われてましたし」
猪瀬「上下一体論は道路公団が望んでいた形なんだ。それを僕が上下分離で決着させた。前原さんはダム問題と同じで、道路についても言うだけで何もやらないな」
清水「とにかく民主党内はバラバラだし財源もない。ないないずくしにつけこんで、小沢さんが大岡裁き的に『全部元に戻せばいいじゃないか』と言い出しているのが、現在の構図でしょうか」

 

道路公団民営化こそ
本物の事業仕分けだった

猪瀬「民主党はまず、道路公団民営化のプロセスをよく勉強すべきだよ。民営化でファミリー企業が排除されて、談合がなくなって落札率が落ち、経営効率が上がって、利用者の利便性も向上したわけじゃないか。通勤割引や深夜割引も民営化で実現した。かなり満足な方向に動いたわけだよ。それでも日本の高速道路料金は高いけれど、それは過去、ゼネコンにたんまり払ってしまったツケなんだ」
清水「土建国家を許していた国民が全員でそのツケを払っているわけで、チャラにはできないですよね」
猪瀬「今は民営化で借金は順調に返しているし、必要度の高い路線も建設される。民主党は無料化なんて現実性のない話をする前に、道路公団民営化の成果を勉強すべきだよ。事業仕分けなんて言っているが、道路公団民営化こそ初めての事業仕分けだったじゃないか。それも、1時間やそこらでおもてづらだけ切るショーじゃない。2年も3年もかけて公開議論した、本物の仕分けだったんだ」
清水「その結果、20兆円あった残事業費を10兆円まで減らしたわけで、10兆円分仕分けた奇跡的な改革だったと思いますよ。民主党は来年度、1000円高速など現在のETC割引を整理・廃止して新たに2000円高速を始めると報道されてますけど、いったいどういう狙いがあるのかまったくわからない。通勤割引のような短距離割引を廃止して長距離割引に統一するとしたら、一般道の渋滞は増えるし長距離交通がクルマにシフトするしで、エネルギー効率をひたすら悪化させることになりますから!」
猪瀬「旅客は、長距離は飛行機、中距離は鉄道、短距離はクルマというのが役割分担だろう」
清水「わざわざクルマで遠くに行く気にさせる長距離割引への統一は、CO2削減には最悪ですよ。逆に50キロ以内はタダとか、そういう短距離割引こそ望ましい!」
猪瀬「地産地消が一番エネルギー効率がいいわけだからな」

 (2010年1月の週刊SPA! より抜粋  撮影/池之平昌信)