
嗚呼、幻のGTO。オレを思いきり抜いてくれ‥‥。
オレが知ってる範囲で一番美しいクルマ。
それは、フェラーリ288GTOだ。
日本語で「美しい」と書くと、どこかはかなげなニュアンスがある。288GTOは、スーパーグラマラスでありながら、かすかにはかない。その風情が、どうしようもないほど心を打つ。たとえばF40は、とてつもなくカッコいいけど、とてつもなく美しいかと言うと、ちょっと違うでしょ。
そう言えば、288GTOオーナーのエディ・アーバインが言ってたな。
「フェラーリのロードカーのどこが好きなんですか」
「ルックスだけだ」
生涯最初にして最後になるであろう、288GTOフル加速。
絶対的な加速は、360モデナと同じくらいかな。しかし、そんな物理的性能よりも、それは限りなくステキな瞬間だった。ブーストはコンマ9。1・3のF40が暴力的とするならば、288は狂気のほんの一歩手前、ドライバーに甘美な夢を見る余裕を与えてくれるギリギリの境地にあった。
ユルいF40? とんでもない。288GTOは、そんな軽薄さとは正反対のクルマだ。スタイル、インテリア、ボディ、足、そしてエンジン、なにもかもが、見たイメージそのままに、清楚で、優美で、力強かった。288GTOは、なにもかもがそのまんま288GTOだった。
取材の最後。
「この幻の名車で、私のF355スパイダーを、思い切り抜いてください」
オーナーのS氏にそうお願いした。
ハイウェイで全開加速を繰り返し、周囲を凍らせるほど美しいロッソ・コルサの288GTOと、たわむれるようにオレは走った。ノーマルで触媒レスの彼女が吐き出す、炭化水素の香りを楽しみながら。
ああ、この世はなんてエレガントなんだろう。
(2002年 ROSSO)






